過去エントリ

2008年4月29日火曜日

立川市の指定管理者制度と公的機関における外注

ここしばらくの間、自治体の行なう指定管理者制度や外部委託などに興味をもって注目してきた。
それは、これらの制度の光と影の面についての実体験があったからだ。

はじめに光の面に目を向けていこう。
このような記事を見つけた。
「図書館に管理者制度 立川市方針」

この記事によると、市は指定管理者制度によってコスト削減と利便性の向上を両立させることを狙いとしているらしい。つまり、市にとっても利用者にとってもいいことであるとい  う、win-winな制度であると謳っている。ただし、(社)日本図書館協会は公立図書館への適用はなじまないという見解を示しているということだ。


立川市は指定管理者制度にとどまらず、外注などにも力を入れていて、
私が普段使用している駅前の駐輪場も(実は)外部委託の業者が管理している。
先日、月極契約の更新の際に事務所で待っていたときに気がついた。

働いている方は数人いるのだが、
契約に関わる部分は携われるひとが決まっているようだったのも
外部委託であるということに関係があったのかもしれない。

(太字部分は定かではないです。
個人情報がらみなのか、派遣労働法(?)がらみなのか、その他の理由によるのか。)

ともあれ、市当局はコスト面で得しているのだろうし、もちろん税金がかからないという点で市民にとっても良いことであるのだろう。
利用者の立場としても、7時から19時まで窓口が開いているという点で、行政の提供するサービスよりも満足度が高い。


しかし、これまでの議論において決定的に抜け落ちている視点が1つだけある。
それは、業者に雇用されて「現場で働いている人」
の立場である。


行政や公的機関の会計制度は、単年度方式になっていることが多い。
つまり、契約は毎年更改となっている可能性が高い。
また、近年の風潮で随意契約から競争入札へと契約のかたちも推移してきている。
さらに、自治体の使えるお金は減っていくのがトレンドであろう。

これらのことから考えると、業者の請負金額および働く人たちの給料は徐々に減っていくということにならないだろうか。
これが私の言いたかった影の面である。

しばらく前に書かれたこのエントリには考えさせられた。
「図書館業界の腐りゆく状況」

他にも、卑近な例で恐縮だが、
私の通っていた某大学(旧国立大)は独立行政法人化の際にそれまで大学職員扱いで雇っていた
掃除のおばちゃんを新規雇用の際には派遣業者から雇うように切り替えた。

その結果、以前からいた人は変わらないのに、新しく雇われた人は毎年(入札のたびに)給料が減っていくという事態が起こった。
しかも、引受業者が変わったために、
会社を移らなければ仕事が続けられなくなるという不便極まりないことも起こったらしい。


ここまで色々と書いてきたわけだが、個人的には、
指定管理者制度や外部委託などの制度は、費用対効果の面で多数の利害関係者にとって有効な手段だと思っている。
ただし、現場の人がツケを払っているというような構図によって成り立っているような
案件はいずれ破綻してしまうのではないだろうか。
おそらくこのような状態の案件は意外に多いのではないかと思っている。

2008年4月27日日曜日

この統計を引き合いに出して何が言いたかったんでしょう???(内閣府のDV調査)

4月22日付の日経新聞夕刊1面に毎回掲載されている「あすへの話題」のコメントに統計学のネタとしてうってつけのコメントがあったので紹介しておく。

筆者は元お茶の水大学のS教授であった。
担当講義の1つはフェミニスト経済学(?)らしい。

それはさておき、記事の内容は
内閣府の調査で
夫婦の女性33%、男性17%がDV(ドメスティックバイオレンス)の被害経験者であることが発表されたことに関連している。
(もとデータは これ とか これなど、どちらもpdf形式)
詳しく知りたいかたはこのページ
この数字は実感に比して高すぎるのではないか?というまっとうな疑問を呈した識者を批判する内容の記事だった。
その論拠は、
これは無作為標本調査でこうした取り組み自体が初の試みであること→これまで統計上に現れていなかった実態が表面化しただけ
ということであった。


意味不明。
この記事の問題点は専門家でもなんでもない私が指摘できるだけでもかなりある。

例えば、
・有効回答率6割程度→断定するほどの精密さに欠ける。
・暴力の定義が曖昧→いわゆるコトバの暴力(怒鳴る)、無視するなどの態度も本調査には含ま れている。
・初めての調査→比較対象が無い。数値が高いのか低いのか分からない。
・過去に一度でも受けたことがあるかという質問の仕方→熟年夫婦のほうが可能性が高い。
 かつ、熟年層のほうが回答率が高い。
などなど

24歳の私にはよく分からないのだが、いわゆる無視したりこき使う態度や平手打ちなんかは昔の家父長的な空気が残っていた頃のほうが多かったのではないだろうか。
あくまでイメージであるが。

DVというのはたいへんな問題だと思うが、
近年になって深刻化した、とでも言いたげな記事や報道を見るたびに、それらの論拠がほとんど常に薄弱であると感じるのは私だけであろうか。変わったのは何を暴力と捉えるかという意識であると考えるのが妥当だと思うが。
そのような場合、発信者自体がバイアスの塊のように見えてしまうのが恐ろしい。

記事を書いたS教授も今頃後悔してるんですかね?

ここまでいろいろと言ってきたが、統計の使い方は本当に難しいし、気をつける必要があると感じた。
日経新聞でもあからさまなゴ〇記事がしばしば登場することを心に留めておく必要があると、改めて教えてくれたこの記事には感謝してますよ、実際。さすが日経(笑)

関係ないけど近頃の内閣府は暴走ぶりが目につくのは私だけ?

2008年4月13日日曜日

Googleアラートと地方新聞webサイトの存在意義

一年ほど前からGoogleアラートを使っている。
これは、自分が設定したキーワードを含むニュース記事などを自動的に探してきてGmailにHTMLで送ってくれるという、優れものだ。

この機能のおかげで、普段なら絶対みることができない琉球新聞や北海道新聞の記事に触れることが出来る。
自分が興味を持っているトピックスに関するローカルなネタを知るのにたいへん役立っている。

しかし、せっかくアラート機能でお知らせしてくれても記事を読めないことがままある。
それは、たどり着いた先の新聞社のウェブサイトが会員制サイトであるためである。
現在、5つのアラートを設定していて、毎日に5~30くらいの記事に触れているのだが一日に一度くらいはこのような切ないことが起きる。


さて、地方新聞のwebサイトはなぜ会員制なのか。

・紙媒体の新聞の売上に影響するから?
→私は岩手出身ですがその感覚で言わせていただくと、地方紙を購読する人とwebでニュースを閲覧する人が重なっているとはどうしても思えない。また、新聞配達をやっていた頃の経験則から、地方紙の主な購読者層は年配の方が多かったし、ネットでニュースを見る可能性の高い若い世代はそもそも新聞なんて読まない。同級生と時事ネタの会話をした記憶は今までも無い(現在24歳)。

・広く一般の人々に情報を発信するつもりがそもそもないから?
たしかに情報を公開するインセンティブはあまりないかも。全公開だと、過去記事検索の収益が得られないしね(たいした金額ではないと思うが)。
広告の内容だってほぼローカルだから東京のやつに見てもらう必要が無いってことだろうか。


あー、データがほしい。会員制サイトの新聞と公開している新聞の比較をしてみたい。
発行部数の時系列データと財務データの時系列と広告収入の額(絶対にムリ)とかあればなあ。
こういうのはあったけど、難しそう。
ちなみに先週の東洋経済は新聞特集だった。

2008年4月9日水曜日

鉄道博物館による仕掛け

先日、月に一度埼玉新都市交通(ニューシャトル)を利用する友人にこんな話を聞いた。
「最近、平日なのにやたらと混むんだよね。やっぱ鉄道博物館の影響かな。」

気がつかなかった…。これが、さいたま市とJRによる仕掛けであったということに。
まちづくりのお手本ですな。よくやってくれるよ。

HPを見てみると、大株主が埼玉県とJR東で、それぞれ35%ずつ握っていることを考えても、今回の計画に両者が絡んでいたことを疑う余地は無い。

ところが、気づいている人は普通にいたようで、
wikipediaの記事によると、

 >埼玉新都市交通を利用してもらいたいためか、北大宮駅は載せていない・・・

当然だわな。最近、さいたま市においては浦和の開発が目だっていてそちらにばかり注目していたが、大宮に対してもしっかりと手を打っていたようだ。

ニューシャトルの営業収益は2003年度以降、
26億・27億・27億・28億というように推移している。2007年度、2008年度でどのくらい伸びているか楽しみである。


最近、鉄道関係の記事ばかり。特に鉄道好きというわけでもないのだが…

2008年4月7日月曜日

宇都宮のLRTとまちづくり

以前のエントリで新幹線とLRTについてマクロな視点で書いたが、
今回は宇都宮のLRTというミクロな話題について書く。

LRTの導入が本格的に検討され始めるのは今秋以降になりそうな情勢だが、市民団体などがかなり頑張って活動しているようだ。
その名も「雷都レール」…ネーミングの是非はともかくとして、この市民団体が最近市民向けに小冊子を発行したようなので、是非手に入れようと思い注文してみた。

→”LRT導入へ“入門書” 宇都宮の市民団体がQ&A冊子

まだ届いていないのだけれど、どのような事が書いてあるのか楽しみ。
きっとLRT最高!っていうノリで書かれていて、再考を促すものでないことだけは確かだと思いますが。
ただ、市民団体などがLRT導入についてどのような認識をもっているのか気になるところ。

私の考えは次の記事に近い。(新幹線の話だが)
「新幹線で街は栄えない」 全駅を乗り降りした自称オタクの銀行マンが講演

やはり新幹線の駅は地方都市にとって致命的な危険性をはらんでいると思う。

LRTだって、囲い込みが有効なくらいの規模がなければ成功しないと私は考える。
ただ、富山のように駅前に駐車場をたくさん作ってしまう、ということをしなければ少しはマシだろう。

2008年4月6日日曜日

[書評] ルポ貧困大国アメリカ

ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)


アメリカの貧困層における貧困のスパイラルに焦点をあてた作品。


アメリカに注目している人にとっては言うまでもないことだが、医療保険制度改革は大統領選の主要な争点の1つになっている。
その観点からすれば、非常にタイムリーであり、アメリカの医療保険制度の問題点を知りたい人にとってはとてもよい本だと思う。
以下は、私がamazonに書いた書評の抜粋

アメリカの低所得層に見られる貧困のスパイラルに焦点をあてた作品。大統領選の主要な争点である医療保険制度改革などについての概要を把握するのにとてもよいと思う。
正直なところ、まったく知らなかった情報というものはあまりなかったが、アメリカにおける貧困のスパイラルのメカニズムをを分かりやすくまとめられている点に意義があると思う。

ただ、残念なことに多少筆が走っているきらいがある。
例えば、筆者は作り出された貧困という点を強調しているが、初期条件が同じでも競争がある限り格差は生まれるものであるという方が正しいだろう。
医療制度にしろフードスタンプにせよ、生み出された格差を埋めるための制度であり、制  度が格差を生み出しているわけではない。
近年になって(民営化の名の下に)制度の影響力が弱まってきているというのが実態だろ    う。

因果関係をもう少し丁寧に記述してほしかった、という点で星4つ。ただし、700円の投資  価値は十分にある良書だと思う。


ほんとにもう!
格差解消のためのシステムが貧困を生み出すわけないじゃないですか(笑)
因果関係が逆。

アメリカにおける貧困層の生産メカニズムはかなり強烈。真に解決されるべき問題だろう。ただし、それを考慮しても、移民が増え続けるあの国には依然として魅力があるのだと考えられるし、いい面もたくさんあると考えるのが妥当だろう。