問題の記事は、18日月曜の日経朝刊記事の「学び再考」で、
六時間二十六分から五時間後十七分へ。ここ十年で小中学校教員の平均睡眠時間が三十分減っ た。・・・NHKの国民生活時間調査によれば、一九九五年に七時間十五分だった有職者の睡眠時 間は二〇〇五年には七時間後分へと十分減少した。・・・学校にいる時間は十一時間五十分に なった。NHK調査による勤め人の平均は七時間四十六分。
んで、結論は、
・・・七十五万人に及ぶ巨大な教員集団を多忙化から救い出すことが喫緊の課題である。そしてそ の前に、私たちは先生方のこれだけの長時間勤務に、きちんと報いねばなるまい。
元データは、「第4回学習指導基本調査速報版」および「国民生活時間調査報告書」である。前者の調査主体はベネッセであり、後者はNHKである。ちなみに記事の筆者である耳塚教授は前者のメンバーの一員だ。
違和感を感じる点はたくさんありすぎるので、以下の3点のみについて論証する。
- 調査方法・調査年度などの異なる2つの調査を比較対象としてしまっている点。
- ベネッセの調査は、サンプリングの方法がおかしいので非標本誤差が存在し、教員の抽出者が校長であるという点でバイアスがかかっている可能性が大きい。
- 勤め人の平均労働時間は7時間46分なんて、フリーターやパートも含んでいると考えて間違いない。
2については、学校の抽出は無作為であるが、教員の抽出に際しては校長の主観が入り込む余地が大きいのでどうしようもない。おそらく、比較的労働時間の長い人が選ばれる傾向にあるのではなかろうか。
3については、NHKの調査では、10時間以上働く人の割合は24%である(男性に限れば35%である)という結果が出ていることからも、教員の11時間50分(しかも学校にいる時間)と勤め人の7時間46分(労働時間)を比べるのはナンセンスすぎる。サラリーマンと教員を比べるならまだしも、全有職者と比較することに何の意味があるのか。
以上から、「教員の多忙化」を必要以上に誇張して読者に受け取らせてしまうような記事になってしまっている。
個人的には耳塚教授の「学び再考」の記事は好きなので、非常に残念な思いをした。