過去エントリ

2008年5月17日土曜日

H20大卒就職(内定)率96.9%の愚

久々に統計ネタを書く。

きっかけとなったのは
①asahi.comの記事大卒内定率、過去最高の96.9%「売り手市場」続く

 記事によると、調査を始めた96年以降、最高の数字→売り手市場続いている、というロジックらしい。

このロジックに反駁を加えていくとすると、
1. 「就職内定率=就職を希望する学生数/就職して働き始める学生数」
  のことだから、卒業生の96%が就職するという意味ではない(大卒の就職希望率は約73%)
  という数字と労働市場が売り手有利であることに関係性は薄い
2.就職決まっていない学生がアンケートに解答しない確率が高い、というバイアスが生じうる
3.前年対比では就職希望率 2%増かつ内定率 1%増なのだから、就職を希望した学生に対する内定獲得者の割合はむしろ減少している


今回の記事は、以下の資料に拠っている。
厚生労働省の②報道発表資料と③元データ
②は報道発表用に簡略化したものである。


今回の発表や記事から、私が考える各プレイヤーの思惑はおおむね以下のとおり。

資料①→「就職状況良い」ということを安直に示し、氷河期との格差構造を際立たせたいマスコミ。
資料②→財務省に対し、「こんな状況だからこそニート・フリーター支援すべき」というア  ピール(予算要求のため)

もし、当たらずとも遠からずだとしたら好ましいことではないですな。
ただ、個人的には、この数字を真に受けて自分が3.1%側にいると勘違いして自信を失ってしまう学生がいることのほうが問題。
つい最近まで学生だった私はこういう人を何人も見てきているので。

2008年5月10日土曜日

政令市・中核市・特例市への移行ブームと盛岡市の規制緩和

近頃、市町村合併も一段落し、いくつかの自治体では政令指定都市中核市特例市へ移行する動きがある。

そのような自治体の1つである、盛岡市(特例市→中核市へ)が興味深い動きを見せている。
盛岡市が規制緩和へ 市街化調整区域」の記事によると、
市街化区域からおおむね1km程度の範囲にある市街化調整区域の開発行為に対する規制を緩和するということらしい。
これは、周辺地域の集落維持を目的としたものであると言っている。

ちなみに、市街化調整区域の開発許可は特例市以上の自治体に県から委譲される権限のひとつである。

はじめは、単純に、中心市街地活性化法のご時勢に郊外の開発容認かよ!
と思ったのだが、wikipediaの「盛岡市」の記事を見た後の、私の想像によるとこの動きをりかいするための要諦は、以下のようになる。
1.市の人口30万人を割り込む。
  →中核市の指定要件が緩和されてきたとはいえ、30万人に届かないのは苦しい…
2.30万人に到達するために周辺自治体からの住民をストローしたい(集めたい)
  →盛岡市の人口は横ばいから微減なのに対し、南北に位置する矢巾町や滝沢村はベッドタウンとして人口増の傾向がある。

どう考えても矢巾町、滝沢村から住民を奪い取るのが狙いでしょう。このあたりの関係もあるでしょうし。
集落維持のため、だなんて不自然だと思った。そんなことプレスリリースできるわけないケド。

あと、マスタープランの地図どうにかならないのだろうか。見づらい…

2008年5月6日火曜日

新公会計制度についての雑感

最近、新公会計制度という名のダブルスタンダードが何を意味しているのかについて注目している。
導入されることで、わたしのような一般の市民にとってどのようなメリットがあるのかはいまいち分かっていない。
ただ、基準モデルと総務省方式改訂モデルのどちらを採用するかで、各自治体の先進性や優良度が多少はっきりとするのではないかと勝手に思っている。


制度の概要を知るために読んだ本は↓

公会計改革―ディスクロージャーが「見える行政」をつくる


この記事を書こうと思ったきっかけになったのは↓

新公会計制度の取り組み方(富士通総研)

この言説の趣旨は、
 1.基準モデル、総務省方式改訂モデルのどちらを採用しても中期的な視野で捉えた改革(導   入)費用に大差はない。
 2.両方式ともにメリット・デメリットがあるので、自治体の目的や特性に応じて決めればい  い。
 3.どちらの方式にせよ、続けることが大前提になるので、いったん導入すると方針切り替え  のコストが膨大

ということであると思う。正論。
ただ、実情はどうなっているかというと、
各務原の事例にもあるとおり、基準モデルの導入には初期費用がかかり、総務省改訂の場合と比べて導入がやや困難なようだ。

現時点で理解しているところによると、
規模がそれほどでもなく、財政状況も芳しくない自治体にとっては基準モデル方式を採用するメリットはあまりない。
メリットがあるとすれば、先進的な取り組みをPRするためとか、市場からの資金調達をしていきたいと考えているとか、現時点での財政状況を把握し将来のために役立てるなどの必要性のある自治体に限られるのではないだろうか。

そのような観点から、基準モデルを採用する(できる)自治体は比較的健全な自治体であるといえるのではないかと考えている。

別にそれが問題なのではなくて、
・自立できる自治体は独り立ちしてくれという国側の意向が表れていると解釈すべきなのか
・財政的に苦しい自治体に対する緩和措置と解釈すべきなのか
判断がつきかねる。

おそらく基準モデルを採用する自治体は前者のような捉え方をしているのだろうし、
改訂モデルを採用する自治体は後者のような捉えかたをしているのだろう。

意味不明になってきたので、
公会計制度については頭の中を整理してからいずれエントリを書く予定。